おばあさん猫・ムニとヒトミと、ちょっとグーちゃん

今から18年前、東京からイタリアのトリノへ移り住んだ私と愛猫ム二とヒトミ。今では21歳を超えた二匹たちとの暮らしぶりや、老猫介護苦労話、新しくやって来たラブラドールのグーちゃんとの楽しくて切ない記録です。

三角関係 その2

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「オ・ドゥエ・ガッティ」という言い方が身に染み込んでいる。
「猫を二匹飼っています」という意味のイタリア語だ。
ガッティGATTIが猫の複数形。
他にもミーチmici(にゃんこ?)とか
ミチェッティmicetti(猫ちゃん?)などいろいろ言い方はあるが、
どれも複数形。どうしても
「オ・ウン・ガット」 猫を一匹飼っています、と
言うことに抵抗があるというか慣れないというか。

私の人生のうちの、21年と9か月を猫2匹と
生きてきたんだからしかたないね。

ところがこの私が猫を3匹飼っていた時期がある。
今の夫と暮らし始めて、夫が飼っていたその猫が死ぬまでの
6年ほどの間、我が家はトレ・ガッティを飼うという、
けっこうな大所帯(?)だったのである。

その猫は「ネーヴェ」という名前の
でっかくて黒くて長毛で、ディズニーの
アニメーションに出てきそうな典型的な猫だった。
つまり、飼い主の前では「なあーん」と
甘えるくせに、陰では意地悪でずる賢いという。
どんなにネーヴェが嫌なヤツだったかという話は
次回に取っておくとして、今回はネーヴェと、
私のカワイコちゃんたちの衝撃的?な出会いについて書こうと思う。

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まだ私と彼がそれぞれ一人暮らしをしていて、
「いつか一緒に暮らそうそうね」なーんて
言っていた頃のお話。一緒に暮らすなら
猫たちの相性がいいかどうか様子を見てみようということになり、
ある日、私のアパートに彼がネーヴェを連れてやってきたのだ。

夫がネーヴェを入れたケージをそっと床に置き、
ケージの扉を開けると、ネーヴェは部屋の様子をうかがいながらも
堂々とした様子でゆっくりと出てきた。

真っ黒で長毛、往時は7キロもあったという、
ノルウェーフォレストキャットと
ペルシャのミックスのネーヴェが歩く姿は、
威風堂々という言葉そのものだった。
身体が堂々としているだけでなく、
お出かけ猫だったから喧嘩の経験も豊富で
ボス猫の風格バッチリ。

一方、深窓のお姫様としてマンションの中で生まれ育ち、
飛行機に乗ったことはあるけれど
他の猫と触れ合ったことなんて動物病院の待合室で
すれ違ったとか、そんな程度。
ビビったムニは、それでも家長(それは私ですが?)の
威厳を保とうと「ふううううう~」という
情けない威嚇声を出し始めた。

ヒトミはというと、しかし、ずっと黙っている。
へえー、ヒーちゃんは怖くて声も出ないのかな?
それとも意外とネーヴェと仲良くできたりして、
ナーンて言いながら、夫がネーヴェを抱き上げて
ヒーちゃんに近づいた途端。

「シャアアアアアア~!!!」
ヒーちゃんが今まで聞いたこともないような
ものすご声をあげたのだ。
ムニの「とりあえず、私の家だし、威嚇しとこか」
という適当な感じの声とは違い、
喉の奥から絞り出すような怒りに震える唸り声。

でもよく見てみると、それはネーヴェにではなく、
どうやら夫に向けらている。

ヒーちゃんはわが家に来たその日からずっと
「ムニちゃんが一番、私は二番」と思って暮らしている。
可愛がってもらう順番もご飯をもらう順番も、なにもかも。
多頭飼いの鉄則だというのだから仕方がないし、
ヒーちゃんもそれで納得して、それなりに幸せに
暮らしているのだと思っていた。

ところが夫が私のアパートに通ってくるようになってから、
猫好きの夫はヒーちゃんをとても可愛がった。
ヒーちゃんにしてみれば
「私を一番に可愛がってくれる人ができた」と
しあわせ一杯だったに違いない。メス猫だから
ラブな感じもあったかもしれないね。

ところがその人は、ある日、別の女(猫)を連れてやって来た。
ネーヴェや、ネーヴェ、出ておいで、なんて猫なで声をかけている。
ひどいっ! ひどいじゃない!
私をダマしたのねつ、他に女がいたなんてー!
嘘つきっ、裏切り者っおおおおお!!!

ヒーちゃんのシャーは、私にはそんなふうに聞こえて
かわいいやら、かわいそうなやら、
今も時々思い出しては笑ってしまう私です。

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ね、ヒーちゃん。バスルームにて偉そうにくつろぐ、18年ほど前のヒトミ。

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21歳の今も、まだまだイケテルでしょ。