おばあさん猫・ムニとヒトミと、ちょっとグーちゃん

今から18年前、東京からイタリアのトリノへ移り住んだ私と愛猫ム二とヒトミ。今では21歳を超えた二匹たちとの暮らしぶりや、老猫介護苦労話、新しくやって来たラブラドールのグーちゃんとの楽しくて切ない記録です。

ヒーちゃんの本当の気持ち

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ヨーロッパに熱波が到来しているそうで、連日ものすごく暑い。
イタリアの夏は、日中暑くても
日陰に入れば湿気がないからスッと涼しいし、
夜遊びに出かける時分には肌寒いぐらい涼しくなるのが
普通だったのに、今年の暑さときたら日本並み。
熱帯夜のように暑くて寝苦しい日が続いている。

ヒーちゃんが生きていたら、とても辛かっただろうと思う。
身体全体がほぼ真っ黒なヒーちゃんは、
黒が太陽熱を吸収するのか日向ぼっこもあまり好きじゃなかったし、
少し長毛が混ざっていたんだろうと思う、
毛がムニよりも長くて深かったから、
暑さに弱かった(でも寒がりでもあった)。

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こんなにフカフカだったので。


だからあの日、あまり長いこと苦しまないで逝けて、
よかったんだよね、と思う。
ヒーちゃんが逝ってしまってもうすぐ一ヶ月。

ヒーちゃんが体力を落としたのも、
5月末から6月頭にかけて数日続いた
真夏日のせいだったんじゃないかと獣医さんは言った。
地球温暖化の影響で、年々ヨーローッパが暑くなる日が増えている。
地球と環境を壊した人間のエゴは、
動物たちにも深刻な迷惑をかけているというわけだ。

昨日のFacebookでは、高校時代の友達が
飼っていた亀が、急に死んでしまったと悲しんでいた。
それも暑さのせいかもしれない。

子猫時代のヒトミを知っている友人が、
「さやかにあまり心配をかけないように、
さやかがいない時に、っていうのがヒトミちゃんっぽくて
切ないね」とメールをくれた。

子供時代は知らないけれど、長い付き合いのイタリアの友人も
「ムニちゃんの時にうんと辛かったさやかさんを
見ていたヒーちゃんは、そんな思いをさせないようにって、
すっと逝っちゃったんですよ」と言ってくれる。

私にはあまり甘えないコだったからね。
ムニは死ぬ直前まで、歩けなくなっても、
私に抱かれて家中を移動しながら
ニャーニャーと大きな声で私に甘えて(指図して?)いたけれど、
ヒーちゃんは抱かれるのもあまり好きじゃなかったね。

だけどその分、ムニのことが大好きで、
いつだってムニと一緒に寝ていたし、
甘えたい時にはムニのお腹に顔をつっこんで
ゴロゴロ言いながらおっぱいを吸っていた。
ムニは出産経験もないし、避妊してあるから
おっぱいなんかでるわけないのに、
ヒーちゃんが顔をお腹にすりつけると
「ちぇ、しょーがねえなあ」という顔をしてゴロン、と
おっぱいを吸いやすい姿勢になってあげていたっけ。
それはヒーちゃんが大人になって、
ムニより身体が大きくなってもかなり長いこと続いていた。

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ムニのおっぱいを吸うヒーちゃん。これの動画が可愛いんだけど、Hatenaブログは動画は
アップできないみたい。

 

だからみんなは、ヒーちゃんはムニに会いに行ったんだよ、という。
もちろん、そうなんだろう。だけど私は知っている。
ムニがいなくなってから、ヒーちゃんはご飯を
私の手からじゃないと食べなくなっていたことを。

ムニはいつも「ご飯食べるから背中撫でれ~」と
私を呼びつけ、ずっとそばにいないと
ご飯をたべないやつだった。
それを見ていたせいか、
私まで甘えたらさやかさん大変だわ、と思ってくれたのか、
ヒーちゃんは黙って一人で食べていた。

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ところがムニがいなくなってから、
ヒーちゃんご飯だよー、と呼ぶと
かごから起き上がってやってはくるものの、
おちゃわんの前に立ち尽くして食べようとしない。
それで、私が手にのせたり(カリカリの場合)
スプンにのせて(缶詰の場合)あげると
喜んで食べるようになったのだ。
その時、私は気がついていなかったけど、
今、これを書きながらわかった。
ヒーちゃんは、本当はずっと
私に甘えてみたかったんじゃないかって。

そしてもう一つ、思い出したことがある。
ヒーちゃんが1歳ぐらいの頃のことだ。
避妊手術の後、数日体調が悪かったヒーちゃん、
ある時珍しく私のところへやって来て
「ニャーニャー」と言う。何度も言うので
「なあに? ヒーちゃん?」と言うと
ついてきて、というように私を振り返りながら、
自分のベッド(私のベッドの脇に置いてあるカゴ)に歩いていく。
それで私もそばに横になって撫でてあげたら、
安心したように目をつぶったのだ。

具合が悪くて、心細かったから、そばにいて欲しかったんだよね。

だからあの日も、そうだったんじゃないかと思うと
胸がつぶれそうになる。

誰もいない家で、具合の悪い身体を横たえて
じっと、私がそばにきてくれるのを待っていた。
だけど、鍵のあく音がして、やっと会えると思ったら、
私じゃなくて、夫だった。

「もう無理。さやかによろしく言ってね」
ヒーちゃんがそう言いたかったかどうかはわからないが、
まるで誰かが帰ってくるのを待っていたように、
夫がそばへ行ったとたんに、一声出して、
そして息絶えたヒーちゃん。

天国でムニに会えていますように。

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