泌尿器にやさしいセント・バーナード?
先日、仕事のドライブ中、アオスタの北東部にある、
グラン・サン・ベルナルド峠を通りかかった。
ペットライフのブログなのになぜ、峠の話? かというと
このグラン・サン・ベルナルド峠はムニとヒトミの
長生きに大きく貢献してくれた
大切な場所だからなのだ。まあ、聞いてください。
グラン・サン・ベルナルド峠、
その頂上はアルプス山脈のスイス圏内にあるのだが、
イタリアとの国境からその距離たった100mほど。
イタリアから登るには、ピエモンテ州のまた北にある
ヴァッレ・ダ・アオスタ州から車で行く。
国境の検査も何もなく、ひょいと国境をまたぐと
そこはもうスイス。
↑こんなとこ。湖はたいしたことないね。
このあたりは、古代からイタリアとフランス、
スイスをつなぐ通り道として重要な役割を果たしていて、
紀元前に古代ローマと戦争をしていたカルタゴの将軍ハンニバルが
戦車の代わりの象を連れてこの峠を超えてやってきたとか、
ナポレオンがイタリア侵攻の時にもこの峠を通ったといわれている。
で、ムニとヒトミに重要なのは、このナポレオン様である。
ムニは赤ちゃんの頃から血尿が出ることが度々あったのだが、
獣医さんでいろいろ検査をしてもらっても原因がわからなかった。
そしてついに「膀胱の中の毛細血管が
切れやすい体質なのかもしれません。特に問題ありません」と
さじを投げられてしまったのであった!
日本製の食事療法食をたっぷり持ってイタリアへやって来て、
ある時、ミネラルウォーターのガイドブックを読んでいたら
「膀胱炎に悩んでいたナポレオンは、
サン・ベルナルド峠の水を飲んで治した」と書いてあるではないか。
この峠の水は泌尿器系にいいミネラル成分を
たくさん含んでいるのだそうだ。
これだ! と思った私はさっそく
サン・ベルナルド峠へムニを連れて行きました、
というのはウソで、本当は近所のスーパーへ走った。
スーパーで何をしたかというと、
ピエモンテ州で一番ポピュラーでおいしい
ミネラルウォーター「サン・ベルナルド」を買いに行ったのだ。
↑これこれ。もちろんガスなし。ガス入りもあります。
その水を死ぬまでずっと飲んでいたムニは、
以来、血尿を出すこともなかったし、
老猫になっても、猫にありがちな結石や腎不全という病気には
いっさいかからなかった。
血尿は出さなかったけど、緊張するとすぐ膀胱炎になって
私を慌てさせたヒーちゃんも、
最後の一年ほどこそ腎臓の数値が若干悪くなっていったものの、
膀胱炎も腎不全もなく21歳まで長生きしてくれた。
この話をすると、イタリア人の多くの友人たちは
半ば呆れたように笑っていた。
贅沢させ過ぎだと言うわけだ。
私も自虐ギャグとして、
「お金がかかるから私は水道の水だけど、猫たちはいつも
サン・ベルナルドを飲んでいるのよ」と言い続けた。
さて、このサン・ベルナルド、
英語読みすると「セント・バーナード」である。
そう、あのハイジのヨーゼフ、セント・バーナード犬は
この峠で生まれ、救助犬として活躍していた犬なのだ。
Wikipediaにはこんなふうに書いてある。
「セント・バーナードは、2世紀ごろにローマ帝国軍の軍用犬として
アルプスに移入されたモロシア犬が、その後独自の発達を遂げたものと
考えられている。17世紀中頃から、スイス・アルプスの山深い
グラン・サン・ベルナール(フランス語読みだ!/私・注)峠にある
修道院にて雪中遭難救助犬として使役されるようになり、
20世紀初頭に至るまで、2,500名もの遭難者を救助した」
なるほど。
このセント・バーナード犬の活躍の歴史を展示した博物館と、
セント・バーナード犬に会える施設がこの峠にあるのだが、
私たちは時間がなくて、ヨーゼフと遊ぶことはかなわなかった。
博物館の切符売り場で
「時間がないので犬だけちょっと見せて」と
錆び付いた英語で頼んでみたが、係の人はノンノンと繰り返すばかり。
たった100メートルしかイタリアから離れていないのに、
フランス語を操る彼らは頑にフランス語しか話さず、
イタリア語や英語はわからないフリをするというのは有名な話だ。
↑↓会えなかったので、絵はがき購入。ちぇ。時間がある人は、こんなコたちと遊べるらしい。
こんなふうに↑ この辺りのお土産物屋で売っている
セント・バーナード犬のぬいぐるみの首には
必ず樽がくっつけられていて、なぜなんだろうと思っていたら、
この樽に遭難者の身体を温めるためのラム酒を入れて届けたんだって!
偉いなあ。キミもちったあ見習ったらどうだね?
ところで、ミネラルウォーターは犬猫に飲ませてはいけません、
というのが一般常識のようだけど、
それは日本に輸入されているヨーロッパ産の
ミネラルウォーターが一般的に硬水が多いからだと思う。
硬水ということは、結石等の原因になりやすい
マグネシウムとカルシウムの含有量が高いということ。
たとえば日本で有名なエビアンはおフランスの水だけれど
かなりバリ硬で硬度309mg/L。
犬猫には飲ませない方がいいみたい。
一方、ナポレオンもムニも愛飲していた
イタリアのサン・ベルナルドは35.5mg/Lとかなりな軟水。
ちなみにヨーロッパで一番柔らかいといわれている
これもイタリアのラウレターナはなんと14mg/L!
日本の「六甲のおいしい水」は82、
「南アルプス天然水」も62だそうだからかなり柔らかい。
これなら老猫にも優しいというわけですね!